釜浅商店の
共に生きる包丁
A Knife for Life
鍛治のまち・三条の
吉金刃物
YOSHIKANE HAMONO



新潟・三条。金物のまちとして知られる土地で、100年近く包丁をつくり続けているのが「吉金刃物」だ。始まりは大正8年。初代・吉田金吉さんが鍛冶屋として独立し、三条市下田島に工場を構えたのがすべてのはじまり。いま四代目を継ぐのは、山本和臣さん。火と鉄を相手にしながら、毎日淡々と包丁を打ち続けている。伝統を守るといっても、そこに古臭さはない。「不易流行」― 変わらないものを大切にしながら、時代に合った形で手を動かす。そんな感覚が、三条の鍛冶には根づいている。使うほどに手に馴染んでいく包丁。その向こうには、土地の空気と、職人の静かな気配が確かにある。吉金刃物の包丁は、その切れ味と仕立てで、料理人の信頼に応え続けている。
新潟県 三条市
新潟県三条市は、隣の燕市とともに「燕三条」エリアを形成し、日本有数の金物のまちとして包丁や刃物の伝統が息づく。
信濃川、五十嵐川、刈谷田川が形成する平野郡と、栗ヶ岳や守門岳(すもんだけ)に代表される丘陵・山岳地帯という二つの地形を持ち、豊かな水と肥沃な大地が古くから農業を支えてきた。度重なる信濃川の氾濫は、農家の副業として和釘(わくぎ)製造が始まるきっかけとなり、ものづくりの発展にもつながった。100年以上続く工房の職人技が現代の暮らしにも生き、自然と伝統が調和した街並みと文化を育んでいる。



つくるひと
PEOPLE
吉金刃物とカネコ産業








吉金刃物とカネコ総業
鍛治のまちで、私たちが出会ったのが吉金刃物の山本和臣さんだ。山本さんは伝統の鍛冶仕事を大切にしながら、新しい手法にも前向きに挑む人。若いころから他の鍛冶屋とも積極的に交流し、学びを重ねてきたそうだ。今回の菜切包丁は、その山本さんに、釜浅商店のために特別につくってもらった。三条の鍛冶屋は、自社で鍛造から刃付けまでを一貫して行うのが当たり前。だからこそ、刃の精度も仕上がりもぶれない。吉金刃物の包丁には、そんな “ 一貫してつくる力強さ”がある。そしてもうひとつ、この包丁の魅力を支えているのが柄づくりだ。手がけているのは、同じ三条に拠点を構えるカネコ総業さん。もともとは鎌や鍬の柄を製作してきた会社で、現在は包丁の柄も製造しています。マシンで削り出したあと、角を丁寧に落とし、一本ずつ手作業で磨き上げる。カネコ総業の代表・金子薫さんは、「刃は金属で鋭い印象があるからこそ、柄は手に直接触れる部分として、やわらかさや心地よさを大切にしたい」と語ります。その言葉どおり、触れた瞬間に伝わるやさしさには、細やかな感覚が宿っている。吉金刃物の刃と、カネコ総業の柄。それぞれが合わさって、ようやく一本の包丁ができあがる。私たちがこの菜切をお願いしたのは、そんな “ 三条のものづくりの空気”をまるごと届けたかったからだ。
かたち
SHAPE
料理人の手に応える
菜切包丁



料理人の手に応える菜切包丁
菜切包丁と聞くと、家庭の台所を思い浮かべる人が多いかもしれない。けれど、吉金刃物のこの菜切は少しちがう。薄く仕上げられた刃は、片刃の薄刃包丁を思わせるほど繊細で、切り口が驚くほどきれい。野菜を押し切るというより、すっと “通り抜ける”ような感覚がある。それでいて、ただ薄いだけの包丁にありがちな不安定さがない。丁寧なしごとでしっかりと歪み抜きされているから、刃の芯がぶれず、安心して使える。その安定感の上に生まれる “抜けの良さ”が、吉金の包丁らしい。この菜切には、白紙二号と吉金刃物オリジナルの特殊鋼材、二種類の鋼を用意している。どちらも丁寧に鍛え上げることで金属の密度が高まり、硬さと、冴えのある切れ味が生まれる。使う人の手や、料理の場面に合わせて選べるように。それぞれが、違った表情と個性を持つ鋼だ。いずれの素材も、大根の桂むきや薬味の細工など、繊細な仕事に応える鋭さを備えている。そのぶん、力任せに使えば刃を痛めてしまうこともある。つまりこれは、包丁を “扱う感覚”を知っている人のための菜切。台所で気軽に扱うというより、料理の現場でこそ本領を発揮する一本だ。
良い理
REASON
吉金刃物の包丁の
こだわり
鋭い切れ味と研ぎやすさを備えた、白紙二号
芯材には、鋭い切れ味と研ぎやすさに優れた白紙二号を使用しています。
表面の黒打ちは着色ではなく、焼入れや鍛造の過程で生まれる酸化被膜をそのまま活かした仕上げです。
鋼の包丁らしい鋭い切れ味と研ぎやすさを楽しめる、伝統的な雰囲気を持った一本です。
切れ味が長く続く、オリジナル特殊鋼
芯材には、耐久性に優れた特殊鋼を使用しています。硬く摩耗しにくい鋼材のため、鋭い切れ味が長く続くのが特徴です。
その耐久性を活かして刃を薄く仕上げることで、野菜にスッと入り込み、軽やかな切れ味を実現しています。
ステンレスに近い性質を持つ「セミステンレス」と呼ばれる鋼材で、一般的な鋼の包丁に比べて錆びにくく、日常でも扱いやすい素材です。ただし、完全に錆びないわけではないため、使用後は水分をよく拭き取って保管してください。




自社一貫生産
包丁が一丁できあがるまでには、手作業による多くの工程を経なければなりません。吉金刃物では、三条鍛冶の伝統的な製法を守りながら、鍛造から成形、熱処理、仕上げ、銘入れ、箱入れに至るまで、すべての工程を自社で一貫して行っています。だからこそ、一本一本に個性があり、使う人の手に馴染む包丁が生まれます。

刃の抜け感
(刃先と平の形状)
切っ先に向かって細くなる繊細な刃先は、片刃包丁のような鋭さ。しのぎの上にある“平(ひら)”と呼ばれる部分には、わずかな“すき”=「ひ」がつけられ、その絶妙なカーブが、食材を切ったときの抜けのよさを生んでいる。一本一本、丁寧に歪み抜きが施されているから、刃の芯がぶれない。薄くても不安定さを感じさせず、安心して切り込める―。吉金刃物の包丁が持つ、独特の“抜けの良さ”は、そんな細やかな仕事の積み重ねから生まれている。


ケヤキの柄
昔から日本人の暮らしに寄り添ってきた木、ケヤキ。和太鼓の胴や餅つき用の木臼など、強い力が加わる道具にも使わる。それだけ丈夫で、粘りがあり、割れにくい。硬さの中にしなやかさがあるのがケヤキの魅力だ。長く使ううちに手になじみ、色つやが深まっていく。強さと美しさを併せ持つ素材だからこそ、包丁の柄にもふさわしい。

柄の形が半丸
持ち手は、半丸の形を採用。長く使っても疲れにくくなるよう掌にあたる上部はしっかりグリップが利くように角をつけ、指が触れる下部は、丸みをもたせてやさしくフィットする仕上げに。硬い木の中にも、手仕事の温かさを感じる持ち心地はカネコ総業のこだわりが込められている。






